天川慎一です。 とても久しぶりのお菓子便りになります。
今回は当店の『有機黒糖プリン』のお話しです。
昨年2019年渡辺のびのび農園さんの卵を使わせていただけることになり、最初に商品化したのがプリンでした。
と言ってもそんなに簡単ではなく、一度は黒糖(マスコバド糖⋆1)をあきらめてレモンのプリンを出していました。どこがうまくいかなかったかというと...
マスコバド糖などの黒糖やきび砂糖を使用するとプリン生地が固まりにくくなってしまうのです。
以前きび砂糖(本和香糖⋆2)を使用していた時は本和香糖を天板の上に平らに広げて2~3日空気にあてるとプリンが固まるようになりました。
マスコバド糖はそれでもうまくゆきません。
そこでマスコバド糖100%だと風味が強すぎることもあり、オーガニックシュガーと半々にして仕込み、さらに焼成時間を1時間とかなり長めに取ることでやっと固める事が出来ました。
と言ってもかなり長くオーブンに入るためどうしてもプリンにスが入ってしまいます。
これも徐々に改善されてきてはいるのですが、まだ完璧になくすことは出来ないでいます。
こんな感じでいつもあーじゃないこ―じゃないと1人でネチネチ四苦八苦して作っているのがジョンヌのお菓子なのです。
30年も菓子屋をやっているくせになんとも不様ですが変わりませんねー。
今後もネチネチやっていこうと思います。
⋆1マスコバド糖→フィリピン産のオーガニックの黒砂糖。
きび畑に製糖工場をつくり、収穫から24時間以内に製糖するとてもフレッシュな砂糖。
⋆2本和香糖(ほんわかとう)→和田精糖が作る100%沖縄県産のきびを使用したきび砂糖。
とても上品で特徴のある香りが持ち味。料理が美味しくなるとの評価も多い。
子供の頃、夏休みはいつも二人で母の実家の秋田で過ごしていました。
見渡す限りの田んぼ、カブトムシ採り、池や川での魚釣り、その頃の僕たちにとってそこはもう楽園そのものでした。
「すいか食べるけ?」ばあちゃんが私と弟に聞きます。「うん‼」と私たち。出てくるのは半分に切っただけのでっかいでっかいすいかです。
それがここでの「一人前」…。
突然ですが、子供たち‼暑さに負けずたくさん遊んでたくさんの思い出を作ってね。それはきっと大人になっても記憶に残ることでしょう。
大人達‼思い出は大切にとってありますか?その場所や物は今でも残っていますか?もし残っているのなら、これからも残したいですね…。それはきっと今の子たちの記憶にも残ることでしょう。
さて長くなりましたが、「すいかのショートケーキ」です。
何年か前、レストラン『ヌキテパ』の田辺シェフがテレビで特集されていて、その番組で紹介されていた「スイカのショートケーキ」の映像が衝撃的で、次の日早速試作してみたら味も衝撃的でした。いつかうちの店でも…と思い温めていた商品です。
すいか母の実家のものです。今はいとこの「としちゃん」が継いで作っています。皮のふちまで真っ赤で甘いすいかです。
皮目もとてもきれいなので、飾りに使っています。当店では脂肪分の少ない生クリームとココナッツ風味にして合わせました。夏らしいとてもすっきりした後味のケーキに仕上がりました。
短い期間の販売になりますので、お見逃しなく‼
このおいしさがとしちゃんにも届きますように……。(秋田に生菓子送れないので)
天川 慎一
この仕事についた頃、このお菓子にすごく惹かれていました。
最初に勤めたホテルでは、サバランは出していませんでした。ただ、たまに注文が入っているのは、見ていました。
イーストを使うのも、焼成後にシロップに浸すのもその頃たずさわっていたほかのお菓子と全く工程が違い、とても新鮮に感じたのを覚えています。
その後の修行先でも度々出会うお菓子でしたが、催事で一時的につくる商品だったり、生地は外注の出来合いだったり(フランスでの修行先ではすべてそうでした)で、一から手作りで毎日出すのは自店が初めてということになります。
「サバランやババは、シロップを食べさせるお菓子」などといいますが、当店のシロップも紅茶やエピス類で、香りをつけた特製です。ラムの強さにもよく合うと思います。フランスの修行先グランダンのルセットのアレンジです。そのシロップをしっかり抱き込める生地が大切でこのお菓子の一番重要なところです。生地を仕込むときにグルテンをしっかりと引き出さないとそういう生地になりません。
ラ・ブティック・ジョンヌのサバランを手に取っていただくとわかると思いますが、大きさの割にずっしりと重く感じられると思います。そう、シロップがたっぷり含まれているからなのです。
普段、サバランを敬遠されている方もこの機会にいかがでしょうか?
ラ・ブティック・ジョンヌ
天川 慎一
中島のデリッシュネーブルが入荷しています!!
毎年この時期に入荷している瀬戸内海は中島のデリッシュネーブルを使用した『タルトオランジュ』『デリッシュネーブルのマーマレード』の販売が始まりました。
デリッシュネーブルの特徴は、この時期まで木の上で完熟させているため、身はもちろん皮の苦みもほとんど感じません。
ラ・ブティック・ジョンヌでは、その皮も生かすため、デリッシュネーブルを薄く皮ごとスライスして、シロップで漬けています。皮にシロップを浸透させるために6回~7回に分けて砂糖を加えるため、出来上がるまでに4~6日程かかります。このぐらい時間をかけないと、皮が柔らかくなりません。
フランスで【コンフィ】と呼ばれる調理法で、フランス(特に南仏)では様々なフルーツをコンフィにして、チョコレート掛けなどにして、販売されていました。
ラ・ブティック・ジョンヌでは、このオレンジコンフィをギッシリ敷き詰めたタルトに仕上げて販売しています。届いた春が皆様にも届きますように・・・・。
P.S.今シーズンの新商品『サバランオランジュ』もデリッシュネーブルを使用しております。こちらもよろしくお願いします。
毎年この時期になると作るジャム(ゼリー?)があります。
完熟紅玉の皮の赤色が鮮やかな「紅玉りんごのジュレ」です。
りんごを皮ごと水から煮出し、布ごしした”したみ汁”、少量のレモン汁とオーガニックシュガーのみで作ります。
何かお気づきでしょうか?
そう、この配合にはペクチンやゼラチン、寒天等のゲル化剤が全く入っていません。「それで固まるのか?」って思いますよね?
それが、固まるのです。りんごには元々ペクチンが含まれています。特に紅玉などの酸味の強いりんごや熟す前の青りんごには多くのペクチンが含まれています。その中でも皮や皮の近くにはより多くのペクチンが含まれているそうです。
それを初めて知ったときは本当にびっくりしました。不思議だなあと今も思います。みなさんは思いませんか?
ペクチンは酸味の強い果物の方が多く含まれる傾向にあります。同じりんごでも「ふじ」だとペクチンも少なく固まりません。ジャムには通常果物と同量程度の砂糖が入ります。当然かなり甘くなりますが、長期保存するためには必要なのです。ただ、酸味の強い果物を使用すると甘さだけではなく酸味が加わり、インパクトが増し、ジャムが美味しくなります。 味の面からみてなんと理にかなっていることでしょう‼
ラ・ブティック・ジョンヌでは、ジャムをつくる時ペクチンを添加していません。
ジャムに合った酸味の強い果物を選べばその必要はありませんから。
フランスのジャムの本を読むと「gelee de pommes verts」という素材がよく出てきます。直訳すると「青いりんごのジュレ」です。ペクチンの含有量が少ないフルーツのジャムをつくる時は、この青いりんごのジュレを添加します。
ほとんど無色透明で味はりんごの味はしますが、主役の果物の邪魔はしません。味にも色にも影響を与えず、ペクチンの補強が出来るわけです。
聞いた話によると、青りんごの時期(夏季)に大量に仕込んで冷凍保存しておくらしいです。
「紅玉りんごのジュレ」は僕に色々なことを教えてくれました。毎年そんなことを考えながら作っています。 この美味しさと美しさが皆様にも伝わりますように…
前回はシブーストについてお話させていただきましたが、今回は同じく紅玉を使用したこの時期のスペシャリテ『フィエットポム』です。
薄~く焼いたりんごのパイなのですが、この薄さの中に美味しさの秘密がいくつも詰め込まれています。
今回はその美味しさの秘密を紹介します。
その1 赤ワインのジュレ~
上にかかっている赤いジャムは赤ワインを素材にした自家製のジャムです。
レモンとオレンジ、シナモンやバニラ等のスパイスと一緒に煮詰めた特製品です。
炊いている時に立ち上る香りは官能的で、仕事であることを忘れそうになります。イカンイカン(-_-;)
これが焼き込まれて濃厚な味わいとなった紅玉と絡み合い、このお菓子の印象を決めてくれます。
その2 焼成時にパイの下に薄く敷いたグラニュー糖~
このお菓子を食べるとパイの他にもっとパリンとした食感を感じる事が出来ると思います。
この食感は焼成時にパイの下にグラニュー糖を敷き、一緒に焼き込むことで、グラニュー糖が溶け、薄い飴状の板になります。これが食感を作り、このお菓子の印象を深くします。
今年は猛暑の影響か、例年よりかなり早く紅玉が入荷いたしました。
まだ蜜は入っていませんが、味はおいしいです。
早速毎年人気のフィエットポム(りんごのパイ)やシブストに仕立て上げ、店頭に並べました。
紅玉を使ったお菓子はいくつかあるのですが、その中から今回はシブストを紹介しようと思います。
ラ・ブティック・ジョンヌのシブストは僕が働いていたフランスのお店「グランダン」のシブストがベースになっています。ラ・ブティック・ジョンヌでは紅玉のある季節のみのお菓子となっていますが、フランスでは通年製造していました。
グランダンのシブストの何がほかの店のシブストと違うのかというと、
なんとグランダンでは、毎朝シブーストクリームを仕込んでいたのです!
通常多くのパティスリーでは、このクリームを一度にたくさん仕込み冷凍保存しておきます。その方が効率が良いですから。ただメレンゲの配合が多いクリームですので冷凍すると量が目減りします。目の詰まったベタっとしたクリームになってしまいがちなんですね。もちろん仕込み方でカバーできる部分もありますが、限界はあります。
事実グランダンのシブーストを食べるまで、シブストを美味しいと思ったことは一度もありませんでした。
「こんなに違うんだ…。」
グランダンで働いていた時に、その日に売れ残ってしまったシブストをもらい、部屋に持って帰って食べたときの印象は今も忘れません。
ラ・ブティック・ジョンヌでは、その時の思いを再現しようと毎年この時期だけ、毎朝シブーストを仕込んでいます。だから申し訳ございませんが追加はできません。
シブストのホール、あるいは、数がご入り用の方は前もって(前日の午前中くらいまで)ご連絡ください。
前回オーガニックシュガーについてアップさせていただきましたが、1つ忘れていました。
ショートケーキ、シューの他にジャムも砂糖はすべてアルゼンチン産のオーガニックシュガーを使用しております。
ジャムに関しては、雑味のないグラニュー糖の方がフルーツの味がすっきり出せるのでは?という意見も多いと思いますが、ラ・ブティック・ジョンヌでは、アルゼンチン産のオーガニックシュガーを100%使用しております。
確かにグラニュー糖で甘味だけをのせてすっきりさせるのも良いと思いますが、ラ・ブティック・ジョンヌでも以前はそうしていました。でもオーガニックシュガーから香るささやかなきびの香りが、僕はとても好きです。
果物ともよく合うと思います。『砂糖も農作物なんだなあ…』という事実を思い出させてくれますね。↑パッションフルーツとバナナのジャム
でもプリンで使用している本和歌糖や黒砂糖ではくせや香りが強すぎると思います。やはりジャムにはこのオーガニックシュガーなんですよね。
パンにつけて毎朝召し上がる方も多いと思いますし、オーガニックシュガーの方が健康的かな?っていうのももちろんあります。
今年は果物が不作であったり手が回らなかったりで、あまり作れていないのですが、紅玉のジュレやレモンのマーマレードあたりから作っていく予定です。 お楽しみに!
皆様いかがお過ごしでしょうか?
強烈に暑かった夏も終わり、あっという間に秋本番ですね。
ラ・ブティック・ジョンヌも秋のお菓子がそろいつつあります。
そんな中で今回はショートケーキのお話です。
ラ・ブティック・ジョンヌではショートケーキのフルーツはその季節季節で変わります。
11月に苺が始まり、5月頃まで続きます。
その後は、桃(6・7月)、今年から初めたスイカ(7・8月)、巨峰(8~10月)、メロン(8・9月)
と続きます。
それでは 美味しいショートケーキの条件は?
フルーツが美味しいのはもちろんですが、それを支える生クリームとスポンジの質も大切です。
ラ・ブティック・ジョンヌでは
北海道阿寒地区限定生産された生クリームを使用。過度の加工をしないとても口どけの良いクリームです。使用する砂糖もグラニュー糖ではなく、アルゼンチン産のオーガニックシュガーを使用しています。
自然な甘味と風味があります。
スポンジには熊本県産の小麦粉を使用、柔らかな風味が残ります。砂糖はやはりアルゼンチン産のオーガニックシュガーです。だからラ・ブティック・ジョンヌのショートケーキは完全にオーガニックシュガーだけで甘味をつけていることになります。(ほかの商品ではシューもそれに該当します。)
基本的な材料の選定にこだわり抜き自慢のクリームとスポンジでお作りしたショートケーキです。
どのフルーツともよく合います。
「子供にはぜいたく!」というお声もお聞きしますが、「お子様にこそ!!」と言いたいです。
お値段は高くなりますが、コンビニやスーパーで売っている添加物だらけのお菓子を少しガマンして、
是非ラ・ブティック・ジョンヌのお菓子を!!
このショートケーキやシューの美味しさがたくさんの子供たちにも伝わりますように…。
ラ・ブティック・ジョンヌ
天川 慎一
注:スイカのショートケーキのクリームにはオーガニックシュガーは使用しておりません。
去年より販売を始め、一部のお客様をとりこにしている『赤じそのシロップ』その赤じそが岡山の農園より入荷いたしました。
こちらの農園も、有機肥料にこだわりたいへん丁寧に育てられた赤じそです。きれいに丁寧に箱詰めされた荷姿を見ても、それを感じます。
このシロップを作り始めたきっかけは、私の叔母が毎年毎年手作りのシソジュースを送ってくれて、それが大変おいしく、私も子供たちも大好きで、いつもあっという間になくなってしまうのです。 手作りのせいか、発酵が始まり、微炭酸になってしまう時もあり、それがまた美味でした。私はもっぱら焼酎割りです…。
「これ、お店で出来ないかな?」いつもそう思っていました。
叔母に会った時に、お願いしてレシピを頂き、店で出せるよう糖度や殺菌のやり方を調整してやっと販売に到りました。
ただ濃縮タイプのシロップで、水や炭酸水で割って飲むので、どうしても赤じそ感も薄まってしまいますね。(もちろんそれでもおいしいですが…) 780円/本
だから叔母のつくる「シソジュース」にはかないません。
どのくらいおいしいのかって!?
それは皆様に手作りしてもらうほかありません。もしご興味ございましたら、お店でお気軽にお尋ねください。作り方をお教えいたします。 それではまた。
このおいしさがあなたに届きますように・・・。
オーナーシェフ天川慎一
今年も北海道は函館より有機栽培のルバーブが入荷しました。今回は、農家の方にワガママを聞いて頂き、若くて青いものだけを選別して送っていただきました。元々素晴らしいルバーブでしたが、こうすることで、ルバーブ特有のえぐみも全くなくなり、酸味も一層際立ちました。
当店ではきれいな緑色にさわやかな酸味を感じるジャムと塩味のきいたパイ生地にルバーブのコンポートをぎっしり詰め、メレンゲを絞って焼いたタルトに仕立てて販売しております。この美味しさが、貴方に届きますように・・・・